JR長野駅善光寺口の木のファサード

坂倉建築研究所在籍中に、JR東日本からの依頼でJR長野駅善光寺口の駅ビルの計画に関わりました。長野新幹線が2015年3月に北陸新幹線として金沢まで延伸するにあたり、危機感をもった長野市とJR東日本が、まちの活性化のためにJR長野駅善光寺口を刷新することを計画したものです。

駅広場は長野市が別途委員会を開いて計画を進めていましたが、私は商業施設としての駅ビルに、善光寺口にふさわしい公共的なファサードを求めるのは難しいと判断し、街に開くキャノピー(大庇)を市が駅ビルと一体的に整備することを提案しました。善光寺をイメージさせる木をふんだんに使った列柱と、広場全体を覆う140mの幅員の大庇です。

ここで特筆すべきは、大庇の構造の半分を駅ビルの上に乗せたことです。2列の列柱で大庇を支えたのでは広場が狭くなり、駅ビルのファサードも隠し、列柱の象徴性も薄まってしまいます。デザイナーとしては極めて重要なポイントであると判断し、官と民の施設を一体的に整備することのハードルの高さを承知した上で、このような提案をしましたが、長野市とJR東日本の担当者の熱意と粘りのおかげでハードルを乗り越え、実現にこぎつけることができました。

私は常々まちづくりにおいては、官民の境界を曖昧にすることが極めて重要なことと考えています。利用者にとってはこの境界はなにも意味がなく、所有権や管理区分で窮屈なバリアーをつくるのではなく、ひとの流れやにぎわいをつくる為に、境界をあいまいにして、心地よい中間領域をつくることが大切と考えます。

JR長野駅善光寺口の大庇の下も、官民が融合する中間領域と考えています。商業の賑わいが溢れ出すオープンカフェや、市民が特産品を持ち寄る朝市など、人が集まり交流する場となることを願ってデザインを行いました。長野市においても広場の活用について協議するオープンな場を設けていると聞いています。

今年は善光寺の7年に一度の御開帳が4月5日より開催されます。JR長野駅善光寺口は善光寺への起点としての役割を果たすために様々な仕掛けを行ってきました。駅がまちを活性化させるきっかけとなり、まちと密接に繋がることを願っています。北陸新幹線の開業で金沢をはじめ北陸エリアに注目が集まっていますが、この施設が長野の魅力を再発信するきっかけになれば、このプロジェクトに関わってきた人間として無上の喜びです。

東泰規

JR長野駅善光寺口の木の列柱と大屋根

JR長野駅善光寺口の駅ビルと一体化した木の列柱と大庇

都市スケールの列柱と大屋根

都市スケールの列柱と大庇

中間領域としての大屋根下の空間

中間領域としての大庇下の空間

大屋根と列柱は都市のスケール。小庇はひとのスケール。

大庇と列柱は都市のスケール。小庇はひとのスケール。

残念ながら構造は鉄骨で不燃加工した無垢の杉材でカバーしている。ファサードは北面のため暗くならないように、大屋根はガラス屋根に木のルーバーとしている。

残念ながら構造は鉄骨で、不燃加工した無垢の杉材でカバーしている。ファサードは北面のため、暗くならないように大庇はガラスに木のルーバーとしている。

控えめなライティングだが、夜は木の存在感が際立つ。

控えめなライティングだが、夜は木の存在感が際立つ。

140mの大屋根は夜も圧巻の存在感

140mの大庇は夜も圧巻の存在感

夜は自由通路の天井と大屋根がシンクロする

夜は自由通路の天井と大庇がシンクロする

自由通路

新幹線改札口に向かう自由通路